Unusual Whales とは?機関投資家の動きを可視化するツールを日本語で解説
Photo: Rômulo Queiroz / Pexels
米国株の話題を英語で追っていると、チャートの画像に見慣れないクジラのロゴが付いていることがあります。Unusual Whales というツールの画面です。オプション取引の異常な出来高、ダークプールでの売買、そして米国の議員が申告した株取引。ふだん個人投資家の目に触れにくいデータを、一枚のダッシュボードにまとめて見せてくれます。
日本語の解説はほとんど見当たりません。ただ、日本の App Store にもアプリは並んでいます。執筆時点(2026 年 9 月)で日本から何がどこまでできるのか、公式サイトとストアの表示を確認しながら整理します。なお本記事はツールの紹介であって、特定の銘柄や売買手法をすすめるものではありません。
Unusual Whales とは — 大口の「足あと」を見せるダッシュボード
公式サイトの説明は「options flow, dark pool data, and market analysis tools」、つまりオプションフロー・ダークプールのデータと分析ツールを提供するプラットフォームです。並んでいる看板機能は次のようなものでした。
- Follow the Flow — 通常より大きなオプション取引をリアルタイムで検出する
- Congressional Trading — 米国の議員が提出した売買報告を追いかける
- Market Maker Exposure — マーケットメイカーのガンマエクスポージャーの変化を見る
- Mr. Whale — 市場の異常を探すのを手伝う AI 機能
言葉が硬いので、ざっくり言い換えます。「株を大量に動かせる側が、いま何にお金を張っているらしいか」の痕跡を集めて並べたサイトです。売買の中身そのものが分かるわけではなく、公開されている取引データのうち規模や偏りの大きいものを拾い上げて見せる、という作りになっています。
公式トップページには、11,000 を超えるティッカーをカバー、データポイントは 10 億以上、トレーダーのコミュニティは 10 万人以上と書かれています。いずれも運営側の表示であって、第三者が検証した数字ではありません。
運営元は Unusual Whales Inc。始まったのは 2020 年ごろとされますが、公式サイトを見た範囲では創業者や運営チームの詳しい紹介ページは見つけられませんでした。金融データを扱うサービスとしては、そこは少し珍しい部類だと思います。
日本から使えるか — アプリは日本のストアにある。壁は英語と米国市場
結論から書くと、アクセス自体は日本からでもできます。Web 版はブラウザで開けますし、iOS アプリは日本の App Store でも配信されていました。Android 版も用意されています。
一方で、壁は 2 つあります。
ひとつは言語です。日本の App Store ページに表示されている対応言語は英語のみでした。画面に出てくるのも Dark Pool、Gamma Exposure、Sweep といった専門用語ばかりで、日本語化の予定は公式サイトからは読み取れません。用語を英語のまま理解できるかどうかが、そのまま使い勝手を分けます。
もうひとつは対象市場です。扱っているのは米国株と米国のオプションが中心で、議員の取引も当然ながら米国議会のものです。日本株を見るための道具ではありません。日本の証券口座しか持っていない人が、この画面を見て何かを判断する場面はあまり思いつきませんでした。
iOS アプリの要件も確認しておきます。執筆時点の日本の App Store の表示では、iPhone は iOS 18.6 以降、iPad は iPadOS 18.6 以降、Mac は macOS 15.1 以降かつ Apple M1 以降のチップ。サイズは約 60.1MB、カテゴリはファイナンス、本体は無料でアプリ内課金あり、という並びです。iOS 18.6 以降という条件は比較的新しいので、古い端末だとそもそも入りません。日本のストアに付いているレビューは数件しかなく、日本での認知度の低さがそのまま出ている印象でした。
使い方 — 無料アカウントから最初の一歩
いきなり月 50 ドルを払う必要はありません。公式の料金ページには無料プランが用意されており、限定的なデータ、15 分遅延のデータ、Discord コミュニティへのアクセスが含まれると書かれています。
流れとしてはこうなります。
- 公式サイトでメールアドレスを登録して無料アカウントを作る
- オプションフローの画面を開き、遅延データで表示のされ方に慣れる
- 議員の取引ページなど、興味のあるセクションを一通り眺める
- 物足りなくなったら有料プランを検討する
私が最初にやってよかったと思うのは、細かい数字を追うより先に「1 行がどう並んでいるか」を眺めることでした。銘柄、権利行使価格、期日、取引額、そして買い手側か売り手側か。この並びが読めるようになるまでは、リアルタイムかどうかはあまり関係がありません。逆に言えば、慣れないうちから遅延の無いデータにお金を払っても、情報量に押し流されるだけです。
なお無料プランで見られる範囲は、公式に細目まで書かれているわけではありません。第三者のレビュー記事では、非契約者向けのフローは一部の銘柄に絞られている、といった説明も見かけました。実際にどこまで見えるかは、アカウントを作って確認するのが確実です。
料金 — Web は月 50 ドルから、アプリ内課金は円建てで別価格
執筆時点の公式料金ページに並んでいたダッシュボード向けプランは 3 段です。
| プラン | 月払い | 年払い |
|---|---|---|
| Retail Basic | 50 ドル/月 | 504 ドル/年(月あたり 42 ドル) |
| Retail Pro | 75 ドル/月 | 756 ドル/年(月あたり 63 ドル) |
| Retail Max | 120 ドル/月 | 1,224 ドル/年(月あたり 102 ドル) |
Basic の時点でリアルタイムのオプションフロー、議員の取引、スクリーナー、Market Tide などが含まれ、上位プランとの差はおもに上限の緩和です。Basic はカスタムアラート 25 件・ウォッチリスト 5 件・ダッシュボード 5 件といった制限があり、Pro でそれらが無制限に、Max ではさらに 1 分単位の SPX マーケットメイカーエクスポージャーが付く、という構成でした。
データを自分のプログラムから使うための API プランも別にあります。週単位の Weekly Starter が 50 ドル/週、API Basic が 125 ドル/月(年払い 1,500 ドル)、API Advanced が 315 ドル/月(年払い 3,780 ドル)。API プランには MCP 対応が明記されていて、AI エージェントから市場データを引く用途を想定しているのが分かります。
ここで気をつけたいのが、アプリ内課金の価格です。日本の App Store のアプリ内課金欄には Retail Basic Monthly ¥8,000、Retail Pro Monthly ¥12,000、Retail Max Monthly ¥20,000 といった円建ての項目が並んでいました。Web の 50 ドル・75 ドル・120 ドルと単純に見比べると、円建てのほうが高く付く計算になります。契約するならどちらの窓口から入るかで金額が変わる、とだけ覚えておくと無駄がありません。
いずれにせよ、為替も含めれば月 8,000 円前後からの世界です。日本の個人投資家が趣味の範囲で払う額としては、決して軽くありません。
日本の証券ツールとの違いと、気をつけたいこと
日本のネット証券にも高機能な取引ツールはありますが、方向性が違います。証券会社のツールは基本的に「自分が注文を出すため」の道具で、板・チャート・注文画面が中心です。対して Unusual Whales は注文を出す機能を持たず、「他人の取引の痕跡を眺めるため」に振り切っています。似ているようで、道具としての役割が別物です。
日本語で同じことをしてくれるサービスを私も探してみましたが、日本株のオプションフローや大口の動きをここまで整理して見せるものは見つけられませんでした。この領域は、日本ではほぼ空白のままです。
そのうえで、注意点を 3 つ挙げます。
第一に、表示されるのは「大きな取引があった」という事実であって、その意図までは分かりません。強気の賭けに見えるものが、現物株を持っている人のリスク回避目的だった、ということは普通に起こります。
第二に、議員の取引データには時間差があります。売買から報告までに日数が空くため、画面に出た時点で株価は動いたあと、ということが起こり得ます。
第三に、こうしたツールは情報量が多く、見ているだけで何かが分かったような気分になりやすい、という点です。私自身、フローが流れていく画面を眺めるのは素直に面白いと感じました。ただ、それと売買の判断が上手くなることは別の話です。
画面の情報密度が高いので、じっくり眺めるならサブディスプレイがあると楽です。ノート PC の横に 1 枚足すだけでも見え方は変わるので、モバイルモニター のような手軽なものから試すのが現実的だと思います。
まとめ
Unusual Whales は、米国のオプションフロー・ダークプール・議員の株取引といった「大口の足あと」を一画面に集めた米国発のツールです。日本からもアクセスでき、アプリは日本の App Store にもありますが、UI は英語のみ、対象は米国市場。日本株の分析には向きません。
料金は無料プラン(限定データ・15 分遅延)から始められ、有料は月 50 ドルから。円建てのアプリ内課金は Web の表示額より高く付くため、契約する窓口には注意が必要です。
日本語の解説がほとんど無い領域なので、まずは無料アカウントで画面に慣れるところからで十分だと思います。そして最後にもう一度書いておきます。表示されているのは他人の取引の痕跡であって、将来の値動きを示すものではありません。本記事は情報の整理であり、投資判断はご自身の責任でお願いします。
※ 本記事の情報は執筆時点(2026 年 9 月)のものです。料金・対応 OS・対応言語・プランの内容は変更される場合があるため、最新の情報は公式サイトとアプリストアでご確認ください。